あまりの疲れにすっかり眠り込んでいたらしい、気づいたら朝だった。
室内は空調が効いており、半袖だと寒いくらいだ。
窓を触った時の熱さに、外気温を感じた。
あてがわれた女子寮の部屋は、日本で住んでいたアパートよりもよっぽど広く、その広さを持て余している。
トイレと風呂は隣室の日本人と共有だが、不便さはほとんど感じない。
寮の食事は悪くはないが、あまりの脂っこさに辟易してサラダばかりを食べている。
自室の窓から私は、車間距離をギリギリに詰めクラクションを鳴らしながら走る車と、近代的なショッピングモール、豪華な家々、そしていかにも中東らしいくすんだ空気を眺めている。
アザーンの音を聞いて、自分が中東にいる自覚をする。
私たちが所属することになるLanguage CenterはShuweikhキャンパスにあるので、Kaifanの女子寮で暮らしている私たちはバスで移動する。
へジャブとアバヤを纏った女性たちと共にバスへ乗り込む。
気をつけないと違うキャンパスへ行くバスに乗ってしまう。
何度かアラブ人の学生に助けられた。
くすんだ空気と強烈な日差しだけはどこに行っても変わらない。
Shuweikhキャンパスは驚くほど広く、私の所属大学なんてちっぽけだと思ってしまうほどだった。
車社会のクウェートに合わせ、きちんと学生用の駐車場も整備してある。
ちょうどセメスターが始まる時期ということもあり、学生が溢れていた。
おそらく日本の大学での4月さながらの様子なのだろう、時間が経てば学生の数は減るだろうか。
へジャブを纏った女性たちに囲まれ身の置き所のなさを感じていたが、台湾人留学生と出会い少し不安が和らいだ。
容姿も似ており、比較的価値観の近い彼らとは分かち合いやすいものを感じる。
どうやらヨーロッパからの留学生も同じ身の置き所のなさを感じているようで、アルメニアからの3人組は肩をすぼめるように食事をしていた。
中国、台湾、そして私たち日本人に囲まれたヨーロッパ人男性の二人は、とても居心地悪そうにしていた。アラビア語は上手なのに。
日本でアラビア語を専攻していた頃、アラビア語の能力で序列をつけられるのが嫌だった。たとえ、「能力が高い」と評価されるとしても。
ここでもおそらくアラビア語の能力で評価されるだろう。
だが、そうだとしても、アラビア語の能力以外でカバーできる面はあるだろう。不思議とそんなことを思う。
寮のカフェテリアにはいろいろな国籍の学生がいる。
自国の学生と固まっている女性がほとんどだ。私たちの話す日本語もその国際性に花を添えている。
この国では男女が平等に、共に暮らしているように見えて、突然男性の場所と女性の場所がくっきり分かれている場所に出くわすので、正直なところ何度か面食らった。
大学のカフェテリアは1階が女性用、2階が男性用である。
図書館にも男子学生のための読書スペースが確保されていた。
男性の世界と女性の世界、その境界は曖昧になりつつあるのだろうか。
私たち留学生は曖昧な場所にいるのが一番居心地よく過ごせるような気がした。
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