実は前々から「ネイティブ教師による外国語教育」という観点から日本語教育に興味があった。
だからと言って特別に何かを勉強したわけでもないが、ぼんやりと日本語教育の資格を取ってみようかなぁなどと考えていた。
日本での所属大学・学部が日本語教育に強いので、日本語教育に関する授業をいくつか取っていたし、留学生チューターのバイトもしたことがあるが、その程度。
今日はクウェートで日本語教師をしておられる日本人の先生にお招きいただき、日本語の授業にゲストとして出席してきた。
何人かは日本語が話せるという、比較的レベルの高いクラス。
自己紹介した後に日本語で質問をいただき、こういう風にほぼ全員から質問がきちんと出てくるのが日本とは違うなぁと思うなど……
自己紹介では写真を見せることにしていた。
と言っても、5月に長崎(それもメジャーな観光地ではなく、島や外海などへんぴな地域)へ行ったときの写真と、ラーメンの写真、大学で行ったイベントの写真、浴衣の写真……などを見せ、簡単に説明した。
長崎では神社と教会を訪れていたので、「これは神社です」と説明すると、先生が「神社と寺の違いがわからないのよねー」とおっしゃった。
こういうところでも言語を学んで行くのだなぁと実感。
どんな日本語を話したかというと、「やさしい日本語」だった。
日本で取っていた授業で触れたことのある「やさしい日本語」。
これは在日外国人に対して、災害時の緊急情報などを伝える時、確実に伝わるように易しい言い回しをした日本語の文書を発行するというもので、「やさしい日本語」と検索すれば情報が出てくるはずだ。
なぜ「やさしい日本語」が出てきたかと言うと、それは私がアラビア語の授業でネイティブスピードについていけずうんざりしているからであって……
というのもあるが、自分の発話を100%伝えたかったので、簡単な言い回しで話すことを心がけていたのだと思う。
授業を見学したわけではないので「日本語教育がどうこう」ということはあまり感じなかったが、日本で勉強した「目標言語と教室内で共有している言語を使う比率」に関して気を使わなければならないということを実感した。
先生がずっと日本語で発話しておられ、難しいところのみ英語で説明されていたので、私もそれに倣って「講演会」など難しい単語のみアラビア語に置き換えて紹介した。
それでは、アラビア語の授業はどうかと言うと、初級・中級・上級のうち私の受講している中級クラスは全てアラビア語で授業が行われる。
何人かついて行けていない学生が出てくるのは事実だが、全て目標言語(習得しようとしている言語)で授業を行うことの良い点は、「目標言語を話す」という雰囲気が自然と出てくるところだと思う。
普段、授業内では少々複雑な単語の意味を説明するとき以外は全てアラビア語なので、先生に授業とあまり関係のない用事(病気で授業を欠席しますなどの事務連絡)でも「アラビア語で話しかけなきゃなぁ〜」と自然と思ってしまう。
また、同じ授業を取っている友達とはアラビア語で話そうかな、という気分にもなってくる。
英語の方が話しやすいのは明らかだが、クラスにそんな雰囲気があるせいだろうか、友達と宿題の話をしていたとき、使った言語はアラビア語だった。
ネイティブ教師による授業で最も難儀なのは文法ではないか思う。
初学者向けの授業にも出席していたが、活用や格変化をすべて英語とアラビア語で勉強していくのは大変そうだと、日本人の友人たちを見ていて感じていた。
日本の大学でお世話になっている先生から「アラビア語について、あなたがこの大学で学んだこと以上のことはたとえアラブに行ったとしても学べないからね」と言われた。その時はそれは大げさではないかと思ったが、今となってはそれがよくわかる。
クウェートで良い点はアラビア語そのものを学ぶことが出来る点ではなく、四六時中アラビア語に触れられる環境が与えられることだ。
一番苦労しているのは、文法用語も当然アラビア語であることだ。
日本語か英語で言われたらわかるのになぁ……と思うことがしばしばある。
まず時制もアラビア語で言われたら冷や汗もので、その上動名詞や分詞……
(かなりブルーなので、アラビア語の文法用語を一覧できるサイトなどあればお教えいただければ幸いです。)
今日授業で扱ったのは、イウラーブ(اعراب)。
日本でイウラーブという語が出てきた時に「母音記号を付ける」という意味が出てきて何となく面食らったのを思い出すが、要するに格変化だ。
アラビア語で動詞以外の単語は語末の母音を変化させることで格変化させる。
普通は語末の母音を省きながら話すことが多いが、今回の授業は語末の母音をきっちり発音し、正しい格変化が出来るかどうか確認した。
アラビア語の文型はVSOなので、文の後ろの方に主語が来ることもしばしば。今日は見事に引っかかったので、とても残念でした……
ただ、こういうことまできっちり教えるのが語学教師の仕事なのだとふと思った。
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